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#3 家制度の影響を見る

民法が前提とする現代の家族は「核家族」です。それに対して、明治民法の家族は「家制度」からできていました。家制度は現代民法からなくなりました。しかし、いまだに慣習としてまた心理的に、家制度に影響を受けている核家族やファミリービジネスはたくさんあります。家制度的家族は「直系家族」あるいは「日本的家父長制」といわれます。そこでは、年長者、特に父親が権力を持ち、長男が全財産を受け継ぎます。親子関係および兄弟姉妹関係は不平等です。特に、「女性」と「子供」は差別の対象です。

一方、現行民法は男女間、兄弟姉妹間の平等を保障します。家族やビジネスの資産、財産を平等に分けなければなりません。

しかし、ファミリービジネスの研究によって、オーナーシップ(事業の所有権)は、1人かごく少数に集中させることが、ファミリービジネスのサステナビリティにとって有利であることがわかっています。その1人に、長男が選ばれることが少なくありません。家制度の影響が残っているためです。が、それは不平等です。そうしたことから事業承継が混乱し、恨みつらみや足の引っ張り合い、敵対関係、絶縁状態に陥っているファミリービジネスが多々あります。

本来、「オーナーシップ(事業の所有権)」や「ビジネス(実際の事業)」の承継と、「ファミリー(家族)」の承継とは、質(クオリティ)がまったく異なるものです。にもかかわらず、その質的違いはあまり説明されてきませんでした。たとえば、オーナーシップやビジネスでは、数値化や合理的判断が欠かせません。一方、ファミリーは好き嫌い、愛や憎しみ、親密さと疎遠さ、といった損得、利害、打算を超えた情緒的人間関係からなります。それは、数値化できるものでも合理的に割り切れるものでもありません。

ファミリービジネスは、質の違うオーナーシップ、ビジネス、ファミリーの3つからなる「それ以上分割不可能な1つの全体システム」です。それぞれ質が違うため、手を入れず自然なままにしておけば早晩矛盾が明らかになり、「分割」していきます。

ファミリー・セラピーでは、数字で割り切れない情緒的人間関係からなるファミリーの内実を直視し、そのシステムを改善します。その上で、またそれと並行して、ビジネスやオーナーシップとファミリーとのバランスの取れたウィンーウィン関係を育成します。

事業承継は、数字や合理だけで進むことはまずありません。なぜなら、家族の情緒的関係が絡んでくるからです。そのため、表面上うまくいっているように映る事業承継の水面下で、恨みつらみ憎悪が渦巻いていることがままあります。すると、事業承継を経験した兄弟姉妹世代ではもとより、その子供世代、また孫世代で、潜在していた先代家族の問題が浮上したりします。

中長期的に見ると、大変な事態を引き起こしたりします。そうならない場合でも、兄弟姉妹関係は、表面的で冷たいものになりかねません。家族関係が冷戦状態に陥り、コンタクト(接触)しなくなります。そして、コンタクトしたときには「一触即発」状態になって、「お家騒動(家族内戦争)」が始まったりします。

それを予防したり、最悪の状況に陥っているファミリービジネスに適切な介入、危機対応をするために行うのが、ファミリー・セラピーです。

ご関心のある方は、お問い合わせください。ご一緒に取り組みましょう。

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