ファミリーガバナンス

目次

ガバナンスとは

ガバナンス(governance)の語源は、ラテン語の gubernare(船の舵を取る・操作する)にさかのぼり、さらにギリシャ語の kybernan(操舵する・導く)に由来します。

元来のイメージは、「大海原を進む船を、天候や波(外部環境)に合わせて進路を保ち、目的地まで導くこと」です。これは、単なる「管理」ではなく、状況を見極めながら、集団全体を望ましい方向へ導く知恵や仕組みを意味しています。

現代においてガバナンスは、組織やコミュニティが「健全に、責任を持って、透明性を持って運営されるための仕組み」として使われます。

では、ファミリービジネスにガバナンスを適用する、とは、実際にどのようなことを指すのでしょうか。

ファミリーガバナンスの定義

私たちの考えるファミリーガバナンスとは、「家族、所有、経営の三つの円(スリーサークルモデル)が複雑に重なり合うファミリービジネスにおいて、家族システムの長期的な健康と成熟を保証するために構築される、“構造化された自己調整システム”」です

このシステムが、家族全体の自我機能(ego function)として機能することによって、家族と事業の境界を明確にしながら、ファミリーメンバーの間で世代を超えた価値観を共有しやすくなります。具体的な方法として、意思決定の透明性を実現するための合意(ファミリー憲章やカウンシルなど)が挙げられます。

ファミリーガバナンスの目的

ファミリービジネスでは、家族関係と経営の境界が曖昧になりやすいものです。その結果、葛藤・対立・意思決定の停滞が頻発します。これらの問題が起きる可能性を事前に摘み取り、ファミリービジネスの最大の強みである「長期視点」と「結束力」を維持するために、健全なガバナンスを築くことが求められます。

私たちの考えるファミリーガバナンスの目的は、次のとおりです。

  1. 家族、所有、経営の境界線を明確化し、役割と責任を整理する。
  2. 家族の感情的な対立(後継者問題を含む)を受け止めたうえで、安全な対話ができる場を構造化する。
  3. 家族としての意思決定プロセスを透明化・ルール化し、健全な判断能力を担保する。
  4. 家族のビジョンと価値観を、世代を超えて共有し、長期的な事業承継の安定性を確保する。

家族システムの長期的な健康と成熟のために

ファミリービジネス特有の問題として、もともとの家族の歴史や関係性に、スリーサークル上の役割が重なることで関係がさらに複雑になり、問題が長期化しやすいことが挙げられます。

一般的な企業では、社内でケンカをしたらそのまま退職することもできますが、ファミリービジネスではそうはいきません。子どもへの期待(あるいは失望)、兄弟姉妹間のライバル心、親族間の蓄積した恨みや嫉妬といった感情が経営判断に影響するというケースも私たちは多くみてきました。

「家族の心理的対話」と「企業のガバナンス形成」を統合した家族療法(ファミリーセラピー)にご関心のあるファミリービジネス当事者の方、支援者の方は、ぜひお問い合わせください。